これはフィクションである。そう書かなくてはこれがまるで私が書いた文章か、書かされた文章か分からなくなる。
 だからこうして明文化してみたわけだ。
 私が文章を書くにあたってまず気を付けたのは、難しい単語を極力使わない事である。
 断っておくと私は難しい言葉が好きである。なぜならばまるで自分の頭がよくなったかのように感じられるからだ。
 だが得てしてそのようなことは、下らぬ……まあ憧れ混じりの妄執だったりする。難しい言葉を使うものも愚か者も同様に訳のわからぬことをいう。それについてはまず疑いようがない。
 などという思考放棄に近しいことをしている間に辺りの景色は暮れ、赤々と照っていた空には光の点がまばらに散っている。
 普段の学校帰りならば降りるはずの駅を通り過ぎ、二度ほど乗り継いだ先は、本当に都内か訝しんでしまうほどの寂れた無人駅だった。
 周囲は見渡す限りの田畑に覆われ、道路はひび割れ放題となっていた。
 なるほどこれならば。と勝手に納得してみた。
 私は今。勝手に単独で、至って何の因果関係も証拠もないままに最近起こっている事件の『ホシ』とおぼしき人物を尾行している。

続く

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